正常人は膀胱に尿が溜まっても逆流しない逆流防止機構が生まれつき備わっていますが、この逆流防止機構が不十分な場合、逆流症となります。(左図)
膀胱尿管逆流症は尿路感染症で発見されることが多い疾患ですが尿失禁や夜尿症の検査で発見されることもあります。特に急性腎盂腎炎をおこした患児の22-70%に逆流が認められます。
また、尿失禁や夜尿症で発見された場合、膀胱機能障害を合併していることが多くなります。尿路感染症を繰り返すと腎機能障害をおこすことがあり、この逆流による腎機能障害を腎瘢痕といいます (右図)。
診断は排尿時膀胱尿道造影にて行います。この検査で逆流はI 度からV 度の5段階に分類されます。また、腎瘢痕は核医学検査(DMSA腎シンチ)により診断を行います。
治療は年齢・性別などにより異なるが、自然消失をする確率も5年間でI −II 度で80%以上、III ―IV 度で16−43%と高いため、発見された直後は経過観察を行います。この際には尿路感染症をおこさないように予防的に抗生物質を内服します。ただ、V 度は自然消失がほとんど期待できないため、手術適応です。また、思春期以降になるとほとんど自然消失しないと考えられています。
経過観察中に尿路感染症が再発するものは、手術適応と考えます。また、尿路感染症がなくても腎瘢痕が存在し、III −IV 度の逆流が経過観察でも改善しないものは、手術の適応と考えています。
手術は開腹術による逆流防止術が主流です。コーエン法という、膀胱内より膀胱粘膜を剥離してトンネルを形成して、そこに尿管を埋め込む方法が主に行われています。私たちは低侵襲手術として腹腔鏡下手術に積極的に取り組んでいます。腹腔鏡下逆流防止術は、膀胱の外側から膀胱を取りまく筋肉を切開して、尿管をそこに埋め込むリッチグレゴワール法と、開腹術同じ術式を腹腔鏡下で行なうコーエン法を行っています(図)。腹腔鏡下でのこれらの手術は、日本では私たちが最初に行いました。

膀胱を開ける手術は膀胱刺激症状が強く、術後非常に辛い手術ですが、腹腔鏡下逆流防止術は刺激がほとんどなく、また体に対する負担も少ないので入院期間も5日程度と短くてすみ、傷も非常に小さく目立ちません(右図)。リッチグレゴワール法は、2歳以上で片側性のW度以下の逆流が適応であり、コーエン法は、両側性もしくは片側性のW度以上の逆流が適応と考え、使い分けています。腹腔鏡下手術の費用について、リッチグレゴワール法は先進医療で、通常の入院費に加えて手技料を実費でいただく形をとっています。コーエン法は保険診療では認められていないため、全て自費診療で行っています。外来にてご相談ください。
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