男性不妊症(男性不妊症の治療に関するトピックス)
男性不妊症の診断と治療
- 男性不妊症とは
- 症状
- 診断法
- 治療法
- 研究の概要
- 最近の話題
1.男性不妊症とは
避妊せずに夫婦生活を行っていると、90%のカップルが1年以内に妊娠すると言われています。したがって避妊せずに夫婦生活を行っているのに1年以上妊娠しない場合を不妊症と言います。
不妊症のカップルは10組に1組の割合で存在し、その約50%に男性因子が関わっているのが現状です。男性不妊症には、精子の数が少ない乏精子症や精子の動きが悪い精子無力症、精液中に精子が存在しない無精子症などが挙げられます。
2.症状
男性不妊症の症状としては、精巣(睾丸)が小さい、陰嚢が重い・腫れている、精液量が少ないなどがありますが、結婚されて避妊せずに1年以上経過し、妊娠がない場合には不妊症の検査を受けることをお勧めします。
3.診断法
男性不妊症の原因を明らかにするために当科では下記の検査を行い、総合的に診断します。
- 問診・診察:精巣(睾丸)の大きさ、精管の状態、精索静脈瘤の有無などを観察します。
- 血液検査:採血して男性ホルモンや精巣の働きを調節するホルモン(下垂体ホルモンなど)を測定します。
- 精液検査:精液の量、精子濃度、運動率、奇形率を測定します。

(精子)
- MRI:精索静脈瘤がある場合に行います。
- 染色体検査:無精子症や高度乏精子症の場合に血液で染色体に異常が無いかを調べます。
- 経直腸エコー:射精障害がある場合に行います。
4.治療法
男性不妊症の当院での治療方針は
- 精液検査で無精子症(精液中に精子が存在しない)の場合:
精管造影と精巣精子回収法(TESE)を行い、精管造影で精管などがヘルニア手術後やパイプカット後により閉塞している閉塞性無精子症であれば、可能なら精路再建術を行います。また非閉塞性無精子症に対して行われる精巣精子回収法(TESE)では、婦人科と提携して精子を凍結保存し顕微受精(ICSI)を行っています。
- 精液検査で乏精子症の場合:
精索静脈瘤があればその治療を行い(腹腔鏡下手術で、入院約5日間)、なければ内服治療としてホルモン剤以外の治療を行います。また注射療法としてはホルモン剤を用いた治療を行いながら、適宜婦人科と協力して自然妊娠、人工授精、体外授精などの適応を患者様と良く話し合いながら決定しています。
- 膣内射精障害の場合:
妻の膣内で射精までいたらない原因(勃起障害、射精障害)に対してバイアグラやレビトラ、あるいは漢方薬や男性ホルモン剤などの薬物療法を行っています。
5.研究の概要
男性不妊症に関しては産婦人科と連係して、無精子症に対する精巣精子回収法(TESE)や精索静脈瘤の手術を積極的に行っています。精索静脈瘤手術後の精液所見改善率は80%以上で、放射線科との共同研究ではMRIを用いて精索静脈瘤の予後予測因子の検討を行っており、手術後の自然妊娠率の向上に役立っています。
6.最近の話題
現在無精子症に対しては精巣精子回収法(TESE)で精巣内に精子が存在すれば、凍結保存などにより顕微受精(ICSI)を行えますが、精巣内にも成熟した精子が存在しない場合には、それ以上の治療を断念せざるを得ないのが現状であります。しかし最近の研究では精子の培養などが試みられており、精巣内の未熟な細胞も培養により成熟させる方法が開発されつつあり、成果が期待されています。

(受精) |