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夜尿症


現在、多くの日本の夜尿症を治療する医者が原因と考えている夜間尿量が多い(夜間多尿)ことは、最近の研究では夜尿症の1番重要な原因ではないと考えられるようになってきています。これは私たち大人が、いくら寝る前に水分を採っても夜中に起きるか朝まで我慢をして夜尿をしないことを考えても分かります。

その原因がなにであるかを以下に解説したいと思います。当科の河内助教授は夜尿症学会の常任理事であり、国際的にも世界の治療戦略に関する論文作成にも参加しています。これらの実績と経験より現時点での最新の考え方を中心に述べます。


夜尿症の原因と治療
  1. 夜尿症の原因
  2. 夜尿症の治療
  3. 夜尿症の生活指導

1.夜尿症の原因
夜尿症の原因として種々の説があり、治療もさまざまなものが行われています。特に普段の家庭での生活における「指導」は非常に厳格なものまであります。その指導の根拠として、夜間睡眠中の尿量が夜尿症患者において多いという研究報告があります。

デンマークのグループによるすばらしい研究報告ですが、この研究はそのような患者の夜尿が治った後の状態までは報告していません。私たちの研究では夜尿症のない子供はいくらたくさんの水分を寝る前にとっても、朝まで尿を我慢するか夜中に1回起きて排尿することで夜尿をしないことがわかりました。また別の研究において夜尿をする瞬間の膀胱容量を測定すると、その量は昼間の膀胱容量とほぼ同じか少ないという結果でした。

一方、正常児の睡眠時の膀胱容量は昼間の1.5倍以上ということもわかりました。すなわち正常の子供は睡眠中に昼間の1.5倍以上まで尿意を我慢できますが、夜尿症の子供は昼間と同程度かそれ以下で夜尿をしてしまうということです。これらより考えると、睡眠中に尿意を我慢できるようになるか尿意でトイレに起きることができるようになると夜尿が治ると推測されます。

実際、尿量を減らす抗利尿ホルモンという薬で夜尿が治った患者の睡眠中の尿量は、治療前後で有意な差はないという報告があります。まとめますと、夜尿症患者の睡眠中の尿量は多いですが、それが治っていく時には尿量が減るのではなく、多い尿を十分膀胱に溜めることができるようになるか、あるいは尿意でトイレに起きることができるようになる、という結論になります。

2.夜尿症の治療
このような背景を元に治療を考えますと、夜尿アラーム(濡れれば鳴るブザー)は、睡眠中の膀胱容量を増やし、尿意により起きやすくする効果がある方法で、海外では第1選択の治療法の一つとして薦められています。
治療中に膀胱容量が増加するのが主な作用機序で、有効率は3ヶ月で約60%です。


ただ、ブザーでは患児本人は起きないことがほとんどのため、家族が起こしてやる必要があり、毎日行うとかなりの負担になります。このため、環境に問題なく(寝室はブザーが聞こえる距離にある必要があります。また両親に夜に仕事がある場合などは不可能です)、意欲のある患児および家族に行うべきです。

アラームの使い方
  • 治療意欲のある患者および家族に対して用いる
  • 少なくとも3ヶ月間行う
  • 通常は患者はアラームのみでは起きないので、家族が起こしてやる必要がある
  • 多くの場合、尿意覚醒をせずに朝までもつようになり、夜尿が消失する
  • 一晩に複数回夜尿がある場合は、最初の一回目のみアラームを使用する。
  • 起こすときに完全に目をさまさせることが不可能なら、その必要はない
抗利尿ホルモン(デスモプレシンスプレー)も第一選択の治療法の一つとして薦められています。寝る前に鼻にスプレーするだけなので簡単に治療を行うことができます。有効率は40-50%程度であり、尿量を減らす薬なので使用している時は夜尿は減りますが、短期間で中止すると元に戻ることも多いと報告されています。また、使用時に水分を取りすぎると水中毒という合併症をおこすため、使用2-3時間前から次の朝まで水分を制限し、コップ一杯程度にする必要があります。
三環系抗うつ薬もよく用いられますが、有効率は40-50%程度であり、この薬も飲んでいる時は尿意で起きたり、朝まで尿を我慢できるようになりますが、中止すると元に戻ることが多い薬です。

特殊な治療法として鍼治療があります。仙骨部のつぼを鍼刺激すると膀胱容量が増えることが判明しており、週1回の治療で効果があります。一方、夜尿症の原因に膀胱機能が悪かったり、尿道が細かったりする泌尿器科学的異常があります。いろいろな治療に抵抗性の夜尿症や尿失禁は泌尿器科で専門的に精査する必要があります。

3.夜尿症の生活指導
夜尿症の生活指導については最初に述べたように厳格に水分や食べ物を制限するという考え方もありますが、見かけ上夜尿の回数は減っても根本的な治療とはいえません。当然、寝る直前の水分は夜尿に直結するので止めた方がよいと考えられますが、その他は制限する必要はありません。また夜中に起こすのがいけないという考え方がります。夜中に起こすと抗利尿ホルモンの分泌が減って尿量が増えるといわれていますが、これを科学的に証明した研究はありません。

実際、家庭において祖父母や両親が夜中に起こすことにより夜尿がなくなり、病院にかからずに済んだという人も多くいると思われます。よって、起こすのが良いか悪いかは一概には言えませんが、少なくとも夜尿アラームで起こすのは有効な方法であるといえます。ちなみに知りえる限り、海外の学会や論文では「夜中に起こすのがいけない」という議論についての報告はありません。


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