前立腺とは尿道の奥にあり、射精のときに出る精液の一部、前立腺液を作っている臓器です。男性で排尿時に痛みや頻尿、残尿感といった症状が見られる場合には、前立腺炎が疑われます。前立腺炎には細菌感染が原因で時に発熱を伴う急性前立腺炎と、必ずしも細菌感染と関係がなく、症状が長く続く慢性前立腺炎があります。
急性前立腺炎は、尿道から侵入した細菌が前立腺に感染して起こる病気です。前立腺が炎症のために腫れ上がり、尿がうまく出せない状態(排尿困難)になったり、排尿時に痛みを感じたりします。時に高熱を伴い、全身倦怠感などの症状も生じます。思春期以降であれば、年齢に関係なく起こります。
診断は、尿の検査で尿中に細菌や白血球が出ているかどうか調べます。治療は抗生物質の内服または点滴です。重篤な感染の場合、入院が必要となります。熱が下がってからもしばらく(約1ヶ月)の間抗生物質の内服が必要です。完全に治療しておかないと再燃したり、慢性化したりするので注意が必要です。
慢性前立腺炎は前立腺の炎症が慢性的に続いている状態で、慢性細菌性前立腺炎、非細菌性前立腺炎、前立腺痛(プロスタトディニア)の3タイプに分類されます。症状は会陰部や下腹部、陰嚢部などの鈍痛や不快感、また頻尿、排尿時痛、残尿感などの排尿症状です。射精前後に痛みが起こることもあります。
診断は直腸に指を入れて行う直腸診で、まず前立腺部を圧迫して痛みがあるかどうか確かめます。さらに前立腺の部分を圧迫すると前立腺の分泌液(前立腺液)が尿道に搾り出されます。この液を排尿と共に採取し、顕微鏡で観察して白血球や細菌の有無を調べます。
白血球と細菌が両方とも陽性なら慢性細菌性前立腺炎、白血球のみ陽性なら非細菌性前立腺炎、両方とも陰性なら前立腺痛と診断されます。非細菌性前立腺炎、前立腺痛の患者の場合、前立腺周囲の血管(サントリニ静脈叢)が拡張しているという現象がエコー検査で観察されることがあります。これは骨盤腔内の血液の循環が悪い、いわゆるうっ血状態を意味しています。
慢性細菌性前立腺炎、非細菌性前立腺炎では、まず1ヶ月程度抗生物質を内服します。前立腺痛のなかにはいろいろ基礎的な病態が含まれている可能性があります。骨盤腔内のうっ血が原因と考えられる症例の場合には西洋漢方薬の内服や鍼治療が有効です。当科では毎週月曜日の鍼治療外来での治療も可能です。精神的要因の関与の強い症例では、場合によっては心療内科の受診をお勧めすることもあります。 |